飯野山と青野山のけんか
飯野山と青野山のけんか
(丸亀市・綾歌郡飯山町の伝説)
丸亀市は、昔、こんぴら参りの港としてにぎわい、高さ約六十六メートルの亀山を利用した丸亀城は、市のシンボルとなっている。
その丸亀市と飯山町のある丸亀平野には、飯野山(いいのやま)と青野山(あおのやま)という二つの山が並んでいる。これは、その二つの山にまつわるお話しである。
飯野山は、坂出市と飯山町、丸亀市にまたがる山で、標高はわずか四百二十二メートルですが、その形が富士山によく似ているので、讃岐富士ともよばれています。
また、青野山は、なだらかな形をした山で、飯野山と四キロメートルほどしか離れておらず、高さも飯野山とよく似ています。
むかしむかし、この飯野山と青野山は兄弟で、おたがいに相手に負けまいとして、何かにつけてはりあい、口げんかが絶えなかったそうです。
「おい、弟。どっちが強い山か、下の住人どもがよく話しているが、やっぱりおれにはかなうまい。」
と、兄の飯野山が言いますと、
「なあに、力ならこっちが上さ。」
と、弟にあたる青野山も負けてはいません。
「何を言うか。おれの方が大きくて、ずっと前からおまえに負けたことなんて、一度もないんだぞ。」
と言うと、弟の方もすぐ、
「そんな大むかしのことを言うな。おれだってしっかりした、りっぱな木をたくさん持っているし、いつもきれいな山だと評判なんだぞ。」
と、言い返しました。
そんなふうに言い争っているうちに、とうとうつかみ合いのけんかになってしまいました。
けんかをしているうちに、弟の青野山の頂上がくずれてしまい、とうとう青野山はなきだしてしまいました。
そこへ天狗が現れて、
「こらこら、さわがしい。まわりに住んどる者が困っているではないか。けんかをやめろ。」
と言いながら、飯野山と青野山に片足ずつのせて、おしっこをしたそうです。
それが流れていくうちに、飯野山と青野山の西側に大きな川ができ、それが今の土器川になったと伝えられています。
天狗が帰ってからは、二つの山は仲なおりをしたということです。
また、他に、昔一人の大人(オジョモ)がいて、飯野山と青野山に両足をかけて瀬戸内海の水を飲んだという話も残っています。今も飯野山の山頂には、岩の上に巨人の足跡が見えるそうです。
讃岐には、あちこちにくぼんだ土地やこじんまりとした山があるので、このようなお話しが伝えられたのでしょう。
さらに、青野山の中腹には、宝塚・めんどり塚・おんどり塚という三つの塚があって、いずれも黄金が埋められていると言い伝えられているそうです。
飯野山と青野山は、こんなお話しがたくさん残されている、おだやかで身近に感じられる山なのです。
(出典:「さぬきのおもしろ国語集」)
(丸亀市・綾歌郡飯山町の伝説)
丸亀市は、昔、こんぴら参りの港としてにぎわい、高さ約六十六メートルの亀山を利用した丸亀城は、市のシンボルとなっている。
その丸亀市と飯山町のある丸亀平野には、飯野山(いいのやま)と青野山(あおのやま)という二つの山が並んでいる。これは、その二つの山にまつわるお話しである。
飯野山は、坂出市と飯山町、丸亀市にまたがる山で、標高はわずか四百二十二メートルですが、その形が富士山によく似ているので、讃岐富士ともよばれています。
また、青野山は、なだらかな形をした山で、飯野山と四キロメートルほどしか離れておらず、高さも飯野山とよく似ています。
むかしむかし、この飯野山と青野山は兄弟で、おたがいに相手に負けまいとして、何かにつけてはりあい、口げんかが絶えなかったそうです。
「おい、弟。どっちが強い山か、下の住人どもがよく話しているが、やっぱりおれにはかなうまい。」
と、兄の飯野山が言いますと、
「なあに、力ならこっちが上さ。」
と、弟にあたる青野山も負けてはいません。
「何を言うか。おれの方が大きくて、ずっと前からおまえに負けたことなんて、一度もないんだぞ。」
と言うと、弟の方もすぐ、
「そんな大むかしのことを言うな。おれだってしっかりした、りっぱな木をたくさん持っているし、いつもきれいな山だと評判なんだぞ。」
と、言い返しました。
そんなふうに言い争っているうちに、とうとうつかみ合いのけんかになってしまいました。
けんかをしているうちに、弟の青野山の頂上がくずれてしまい、とうとう青野山はなきだしてしまいました。
そこへ天狗が現れて、
「こらこら、さわがしい。まわりに住んどる者が困っているではないか。けんかをやめろ。」
と言いながら、飯野山と青野山に片足ずつのせて、おしっこをしたそうです。
それが流れていくうちに、飯野山と青野山の西側に大きな川ができ、それが今の土器川になったと伝えられています。
天狗が帰ってからは、二つの山は仲なおりをしたということです。
また、他に、昔一人の大人(オジョモ)がいて、飯野山と青野山に両足をかけて瀬戸内海の水を飲んだという話も残っています。今も飯野山の山頂には、岩の上に巨人の足跡が見えるそうです。
讃岐には、あちこちにくぼんだ土地やこじんまりとした山があるので、このようなお話しが伝えられたのでしょう。
さらに、青野山の中腹には、宝塚・めんどり塚・おんどり塚という三つの塚があって、いずれも黄金が埋められていると言い伝えられているそうです。
飯野山と青野山は、こんなお話しがたくさん残されている、おだやかで身近に感じられる山なのです。
(出典:「さぬきのおもしろ国語集」)
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